クリスマスが日本に広まった理由と日本のクリスマス発祥の経緯

クリスマスは今や日本でも毎年大大的に行われる行事となりましたが、もともとはイエス・キリストの降誕を祝う宗教的な意味合いの強い行事です。

キリスト教徒の少ない日本でこれほど広まり、年末の一大イベントにもなったのはなぜでしょう?

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日本で最初にクリスマスが行われたのは戦国時代

1552年に山口で行われたのが日本初

1552年に現在の山口県山口市で行われたクリスマスが、日本初のクリスマスだとされています。

当時日本は戦国時代で、上杉謙信と武田信玄の最初の戦いが始まるくらいの時代です。

フランシスコ・ザビエルがキリスト教の布教のために来日したのが1549年のことですから、その3年後に初めてクリスマスが行われたことになります。

ザビエルと一緒に訪れ、その後日本での布教を託された「コスメ・デ・トーレス」というイエズス会の宣教師が日本初のクリスマスを催しました。

この時は純粋に宗教的な行事として、キリスト降誕祭のミサが行われています。

日本で最初のクリスマスは、キリスト教の布教活動の一環として行われました。

戦国時代のクリスマスの話

戦国時代に日本で布教活動を行ったイエズス会宣教師のルイス・フロイスの著書「日本史」には、クリスマスに関する次のような話が記載されています。

大阪の堺で敵対する2つの軍勢がありました。
クリスマスになると、その戦場近くにあった集会所でミサが行われることになり、多くのキリシタンが集いました。
そのキリシタンの中には、堺で戦っていた軍勢の中から70名もの武士が参加していました。
互いに敵対する軍勢から来ていたにもかかわらず、彼らは争うことをせず、互いに愛情と礼節を持ってクリスマスを過ごしたといいます。

かなり簡略化しましたが内容としてはこんな感じです。

日本で最初にクリスマスが行われてから13年~14年後のことです。

武士が休戦してまで参加していますし、場所も山口ではなく大阪での出来事ですので、このころには日本人キリシタンの間でクリスマスがある程度広まっていたことが伺えます。

なお、この話に登場する2つの軍勢というのは三好三人衆の軍勢と松永久秀の軍勢だとされており、この話をきっかけにして「松永久秀という戦国武将がクリスマスを理由に休戦をした」というエピソードが伝わっています。

クリスマス商戦と大正天皇の誕生日をきっかけに広まる

明治時代にクリスマス商戦が始まる

戦国時代に広まっていたクリスマスですが、その後、成立した江戸幕府が「キリスト教禁止令」を出したことで、隠れキリシタン以外の人には馴染みのないものになってしまいました。

その後、江戸時代が終わり明治時代に入ると、クリスマス商戦という形でクリスマスが日本に関わってきます。

1900年ごろ、明治屋という小売業者が銀座に進出したことからクリスマス商戦が始まったと言われています。

その後、大正時代になると子供向けの雑誌にクリスマスの話が書かれたり、クリスマスシール(切手)というものが発行されたりしました。

教会でミサが行われる本来のクリスマスが広まるのではなく、少しずつクリスマス用の商品によってその認知度が高まっていきました。

偶然12月25日が休日に

大正天皇は1926年の12月25日に崩御され、昭和時代が始まりました。

当時は、先代天皇が崩御された日を「先帝祭」として休日にすることになっていました。

これにより、偶然にも12月25日が休日となります。

このころからクリスマスの習慣が広まるようになり、多くの飲食店ではクリスマス料理が提供され、クリスマスツリーが飾られるようになり、サンタさんの仮装をした店員さんが客を迎え入れるといったことが行われるようになります。

本来の宗教的なクリスマスが広まるのではなく、偶然クリスマスの日が休みになったため、その日に客を呼び込むための効果的手段として商業利用される形でクリスマスが普及していきました。

日本のクリスマスは楽しむためのイベント

宗教的意味は薄れて商業行事に

以上の経緯から、日本ではキリスト教とはほとんど無関係にクリスマスが広まっています。

ですので、ほとんどの日本人は「本来のクリスマスが何の日で何のために何をするのか」ということを知りません。

早ければ11月上旬にはクリスマスツリーやイルミネーションが飾られ、クリスマスケーキやチキンなどの料理の予約が始まり、クリスマスプレゼントのセールが始まり、クリスマスソングが店の中で流れます。

そして、12月26日になると一気にその飾りは片付けられて、すぐにお正月ムードに切り替わります。

「クリスマスイブは恋人と過ごすもの」、「クリスマスの食事は外食やファーストフード」というのも日本独特のもので、これも企業が作ったイメージが定着した結果と言えます。

こういったことは、クリスマスを商業行事として扱っているがゆえに起こる状況です。

本来であれば11月下旬頃に飾り付けを行い、1月6日頃まで飾りはそのまま、クリスマスに出かけるのはミサに行くくらいで、家庭料理をつくって家族と一緒に過ごすというスタイルが欧米式ですが、日本ではそのような形では広まっていません。

お正月との差別化から独特なクリスマスに?

日本でクリスマスの習慣が独特なものになった理由の1つとして、日本には近い時期に「お正月」という行事があるからという意見があります。

クリスマスは欧米に倣えば、「家族とともに自宅で過ごす行事」です。

家族や同じ信徒の仲間とともに、クリスマスツリーや家を飾ったり、料理をつくるなどの共同作業をして、一緒に過ごす喜びを確認するための行事と言えます。

これは日本のお正月になんとなく似ていませんか?

今でこそお正月もだいぶ様変わりしていますが、少し前までは「門松やしめ縄などの正月飾りを協力してつくったり、年末にお餅やおせち料理を作ったりして、正月になれば初詣に行くくらいで家族揃って自宅でのんびり過ごす」このようなお正月の過ごし方が一般的でした。

クリスマスとお正月は時期としても近いので、本来的なクリスマスを取り入れれば似たような行事を連続してやることになります。

すでに家族で過ごすお正月という行事が浸透していた日本では、クリスマスは違った形で楽しめるイベントである必要があったのかもしれません。

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